日本でIT経験を活かすには?中国籍エンジニアが知っておきたい働き方と採用の実情

你好!李陽佳(り・ようか)です。中国・遼寧省の出身で、10歳のときに日本へ移住。現在、外国人向け人材紹介会社に勤めながら、主に中国出身の求職者向けに就職支援を行う一方、そこで得た知識をお伝えしたいと思いこうしてライターもしています!

さて、今回はIT業界のお話です。私自身はITエンジニアではありませんが、多くのエンジニアの先輩や企業の担当者の方々と話すなかで、中国籍のIT人材が日本で活躍するために必要な現実的な知識と可能性を学んできました。

最近は、ChatGPTやNotebookLMなどすっかりAIが身近になりましたね。この記事ではそんなAIを、使うのではなく、開発・提供するという仕事も含めて、中国籍エンジニアが日本でキャリアを築くうえで知っておきたい「働き方の種類」「現場の文化」「ビザの取得条件」「SESやSler企業の違い」「キャリア戦略」などについて紹介します。

中国籍エンジニアが注目される理由とは?日本のIT業界の人材ニーズ

日本のIT業界では、少子高齢化やデジタル化の加速により、慢性的なIT人材不足が深刻化しています。経済産業省の予測では、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると言われているのです(参考:IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果)。

このような背景のもと、外国人エンジニアの採用が進んでおり、特に中国、ベトナム、インドなどの出身者が多く活躍しています。

なかでも中国籍のIT人材は、以下の点で高く評価されています。

  • AIやビッグデータ分野を含む理工系の専門性
  • JLPT N1/N2など高い日本語力
  • 柔軟な学習力と現場への適応力
  • 中国語と日本語のバイリンガルスキルによるブリッジSEとしての強み

これらは、日本のSler(受託開発企業)やSES(常駐型エンジニア)といった現場で、クライアントと開発チームの橋渡し役として活躍するうえで、大きな武器となります。

求められるスキル領域と活躍が期待される分野

日本企業が求めるスキルは、従来のJavaやPHPに加え、クラウドやAI、DevOpsといった先端領域へとシフトしています。以下のような技術は、転職市場で特にニーズが高いです。

分野キーワード例説明
クラウドAWS、GCP、Azureサーバーを持たず、インターネット上でシステムを構築できる技術。最近のITインフラの主流です。
フロントエンドReact、Vue.js、TypeScriptWeb画面を見た目も含めてつくる分野。ユーザーに近い開発で人気。
AI・機械学習Python、PyTorch、TensorFlow、LLMなどデータ分析や自動予測などに活用。ChatGPTのような生成AIも注目分野。
モバイル開発Flutter、Kotlin、Swiftスマホアプリの開発で使われます。
DevOps/SREDocker、Kubernetes、CI/CD、自動化ツール全般効率的にアプリを開発・運用するための仕組みづくりを担います。

特にAI分野では、博士号や研究開発経験を持つ中国籍人材がSES企業や自社開発企業で即戦力として採用されるケースも増えています。

Sler・SES・自社開発企業の違いと日本での働き方

日本のIT業界における働き方は、大きく3種類に分けられます。それぞれの特徴と、現場でのチーム体制について見てみましょう。

Sler(受託開発企業)

  • 官公庁や大手企業の業務システムを受託で開発
  • 要件定義からテストまでをチームで分担
  • 長期プロジェクトが多く、安定性がある

SES(常駐型エンジニア)

  • クライアント企業に常駐し開発支援
  • 社外メンバーと働くため、高いコミュニケーション能力が求められる
  • 幅広い業種・技術を経験できる一方で、職場環境は案件ごとに異なる

自社開発企業

  • 自社製品やサービスを自分たちで開発・運用
  • 技術選定や設計に裁量があり、創造性を活かせる
  • 多国籍なエンジニアが多く、英語や中国語が活きる環境も増えている

なお、中国籍エンジニアが最初に選ぶことが多いのはSESともいわれています。理由は「即戦力としての技術力」よりも「日本語コミュニケーションに慣れる環境」としての側面があり、複数の案件を経験しながら技術力を磨ける点にあります。将来的には、Slerや自社開発企業にステップアップしていくパターンが多く見られます。

また、日本のIT現場ではチーム単位での開発が基本です。

  • ウォーターフォール型:要件→設計→開発→テストと順番に進む手法で、官公庁や大企業に多く見られます。
  • アジャイル型:小さな単位で開発と改善を繰り返す手法。スタートアップやWebサービス系で主流。

最初はテストや実装から始め、技術力や、日本語力を活かしてチームメンバーに指示を出してまとめていくスキルが認められると、要件定義や設計など上流工程へステップアップするチャンスも広がります。日本の現場では「報連相(報告・連絡・相談)」が非常に重視されるため、チームの中で自分の役割を意識して動く力が重要です。

中国語と日本語を使いこなせる方は、日中プロジェクトのブリッジSEや多国籍チームの情報連携役として、企業からのニーズが特に高まっています。

就労ビザと日本語、カルチャーギャップへの対応

ITエンジニアとして働くために必要なものは当然、技術力。さらに、それが日本でとなると、就労ビザと日本語力が必要です。

技術・人文知識・国際業務ビザ(通称「技人国」)

日本でIT職に就く際の基本的な在留資格で、以下の条件を満たす必要があります。

  • 情報系・理工系の学位、もしくは10年以上のIT実務経験
  • 日本企業との雇用契約
  • 技術性が認められる業務内容(雑務や単純作業はNG)

日本語力と職場でのコミュニケーション

  • JLPT N2以上が一般的(必ずしも完璧な日本語は必要ありません)
  • チーム開発では誠実な姿勢と報連相が信頼構築のカギ
  • 英語や中国語OKの企業も増加中(とくにグローバル開発チーム)

一方で、技術力と日本語力のどちらも伸ばそうとすると、それだけ時間がかかることになります。しかし、ある中国籍エンジニアの先輩は「日本語に自信がなくても、まじめに聞き、わかるまで確認する姿勢が伝われば、現場では信頼されます」と語ってくれました。語学力があるといいですが、それ以上に気持ちや姿勢が大事ということですね。

キャリアアップに向けた企業選びのポイント

最後に、とても重要な、「企業選びのポイント」と、あなたが日本でITエンジニアとして活躍するために意識した方がよい資格や経験をお伝えします。

企業選びのチェックポイント

  • 外国籍社員の受け入れ実績があるか?
  • ビザ取得や更新のサポート体制はあるか?
  • キャリアパスや教育制度が明確か?
  • 中国語を活かせるグローバル案件(特にAIやSler案件)があるか?

キャリア形成に役立つ資格・経験

分類具体例
資格基本情報技術者、応用情報技術者、AWS認定、PMPなど
実務経験要件定義、コードレビュー、チームリーダー経験
言語力JLPT N2以上、英語や中国語でのブリッジ業務経験

将来的には、ブリッジSEやITコンサルタントとして「語学+IT+マネジメント」を組み合わせたハイブリッド人材を目指す道もあります。

IT×中国語で、未来のキャリアを切り開こう

日本のIT業界では、今まさに中国籍エンジニアの経験と多言語スキルが求められています。SlerやSESなどの業界で経験を積み、AIやグローバル案件に関わることも決して夢ではありません。

まずは「求人情報の収集」や「中国語対応エージェントへの相談」から始めてみましょう。今の一歩が、あなたの未来のキャリアにつながります。

あなたのスキルと情熱が、日本のIT現場で輝くことを願っています!