なぜ中国は超学歴社会と言われるのか?日本との違いを解説

日本で生活されている中国人の方は、日本語や英語が堪能な方が多いと感じたことはありませんか。

中国人の方たち本人の努力はもちろん、彼らが熱心に語学の勉強に励む背景には、中国の学歴社会が関係しています。

現在、中国は「超」学歴社会とも言われています。

今回は、そんな中国が学歴社会化した背景、中国における学歴社会の構造、日本との違いなどについて解説します。

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中国が学歴社会化した背景

中国が学歴社会化した背景にはいくつかの要因があります。

一人っ子政策の影響

中国が学歴社会化した要因の1つとして、「一人っ子政策」が挙げられます。

一人っ子政策とは、1979年から2014年にかけて中国で行われていた政策です。 一人っ子政策の目的は、一組の夫婦がもうける子どもの数を一人までに限定することで、中国全体の増えすぎた

人口を抑制することでした。

この政策の影響で、「たった一人しかいないわが子を有名校に行かせてあげたい」という親心から、中国には教育熱心な親が増加しました。

また、扶養する子どもの数が減少したことで、子ども一人あたりにかけられる平均教育費も増加しました。

このように、たった一人のわが子にかける親の期待や教育への投資額が高まったことで、中国の学歴社会化が加速したといわれています。

大学定員の増加

中国が学歴社会化した要因の1つとして、大学の定員の増加が挙げられます。

近年の中国では、大学の募集定員を大幅に増やす「拡招」という政策が行われており、大学の合格率は80%を突破しました。

中国教育省の統計によると、2022年度の卒業見込み大学生は1076万人とされています。

このような大学教育の大衆化によって、大学卒業を応募の必須条件に設定する企業も出てきたため、中国では就職のために大学進学を選択する学生が増加しました。

大学院教育の規模拡大

中国が学歴社会化した要因の1つとして、大学院教育の規模拡大が挙げられます。

中国の2022年度の大学院修士課程の入学志願者数は、過去最多の457万人を記録しました。

このように大学院への進学を検討する学生が増加した背景には、大学進学者が増えたことによって、大学を卒業しただけでは良い就職先を見つけられないという現状があります。

また、初任の平均額が、大学新卒者で5823元(約10万4869円)であるのに対し、大学院修士課程修了者は1万113元(約18万2131円)、大学院博士課程修了者は1万4823元(約26万6956円)とかなりの差があります。

就職により有意な学歴や、より良い給料を求める人々が増えたことが中国の学歴社会化に大きな影響を与えたと言えます。

中国における学歴社会の構造

中国人の方は、有名校に入って高学歴を身につければ、よい就職ができて高い社会地位を手にすることができるという認識が強い傾向にあります。

実際、中国の大企業や政府機関は基本的な採用基準を大学院卒業以上と設定しており、中小企業であっても四年制大学の卒業程度の学歴が求められます。

ここでは、中国における学歴社会の構造として最も有名な「高考(ガオカオ)」についてご説明します。

高考(ガオカオ)とは

高考(ガオカオ)とは、中国の大学入試のことです。

正式名称は「普通高等学校招生全国統一考試」で、日本で言うところのセンター試験や共通テストに該当します。

高考(ガオカオ)は、毎年6月7日から9日の3日間にわたって実施されます。

試験期日は共通ですが、各省によって試験内容、成績公表日、出願期日などがそれぞれ異なるというのが特徴です。

科目は国語・数学・外国語が必修で、それ以外に選択科目(物理、生物、歴史、地理、政治など)を受験します。

どの科目もマーク式と記述式の混合問題で構成されており、750点満点です。

受験生は高考(ガオカオ)の受験後、自己採点の結果を受けて志望大学に応募します。

中国には二次試験の文化がないので、大学に合格できるかどうかは高考(ガオカオ)の結果にかかっています。

これが、中国で「高考(ガオカオ)は人生の一大事」と言われている所以です。

日本との違い

日本と、超学歴社会と呼ばれている中国にはどのような違いがあるのでしょうか。

大学入試システムの違い

日本と中国の大学入試システムは大きく異なります。

日本のほとんどの国公立大学は、共通テスト(旧センター試験)と二次試験の結果を判断材料として合否を決めます。

しかし、中国の大学入試に二次試験はなく、高考(ガオカオ)の結果のみで合否を判定します。

挽回のチャンスがある日本の大学入試制度に比べて、一発勝負である中国はかなりシビアと言えます。

また、中国の大学入試には地域格差が存在します。

各大学はまず、募集定員の内、大学の所在する地域の出身者に多くの定員を割り当てます。

そして残りの定員を他の省や自治体に住んでいる受験生に割り当てます。

つまり、A地域の大学を志望した場合、A地域に住んでいる受験生は650点で合格できるものの、B地域に住んでいる受験生は700点以上とらないと合格できない、といった事が容易に起きてしまうのです。

生徒の出身地によって、志望校の合格ラインや定員が変化するというのは、受験生の居住地がどこであろうとも成績上位者から合格を決めていく日本の大学入試制度と大きく異なります。

大学入試受験者数の違い

中国の大学入試である高考(ガオカオ)の2022年度受験者数は1,193万人でした。

一方、日本のセンター試験・共通テストの受験者は毎年約50万人ほどです。

そもそも中国の人口が日本の10倍以上であるということを考慮しても、これほど多くのライバルがいるという事実は、中国の受験生が感じる精神的な負担に少なからず影響を与えているでしょう。

就職への期待

学歴社会を生き抜いている中国の学生は、自身の学歴に対してプライドを持っていらっしゃる方が多いです。

また、中国社会では、有名校に入って高学歴を身につければ、よい就職ができて高い社会地位を手にすることができるという認識が強く根付いていることもあり、日本の学生に比べて、中国の学生の方が就職に対して高い期待を抱く傾向があります。

そのため、中国人の方は就職活動や就職先に理想と現実のギャップを感じてしまう方も多いようです。

中国の学歴社会で生じている問題

「超」学歴社会と呼ばれる中国ですが、皆が皆、高学歴というわけではありません。

中国の2021年度大学進学率は58%であり、約半数は大学に進学していないことがわかります。

ここでは、中国の学歴社会で生じている諸問題について解説します。

学歴の重視による受験者間格差の拡大

中国の大学の学費平均は、1989年の約年間190元から現在は5000〜7000元にまで高騰しました。

また、わが子を良い大学に行かせるために、多額のお金をわが子の教育費や受験費用としてつぎ込むご家庭も年々増加しています。

家庭の所得によって教育や受験にかけられる金額が異なるというのは受験者間格差の拡大の要因といえるでしょう。

また、高所得世帯では日本をはじめとした海外への留学を検討する学生が増加しており、受験者間格差にさらなる拍車をかけています。

地域ごとのボーダーの差を利用する高考移民の発生

中国の大学入試には地域格差が存在します。

各大学はまず、募集定員の内、大学の所在する地域の出身者に多くの定員を割り当てます。

そして残りの定員を他の省や自治体に住んでいる受験生に割り当てます。

つまり、A地域の大学を志望した場合、A地域に住んでいる受験生は650点で合格できるものの、B地域に住んでいる受験生は700点以上とらないと合格できない、といった事が容易に起きてしまうのです。

この制度を利用して、レベルの高い地域からわざわざレベルの低い地域に引っ越して受験しようとする人々のことを「高考移民」といいます。

現在、高考移民は法律によって禁止されているにもかかわらず、毎年一定数は高考移民が表れてしまう現状があります。

深刻な不正問題

中国では、高考受験時のカンニング、替え玉受験が社会問題になっています。

2016年北京では、過去最大規模とされる33人が関与したカンニング事件が発生しています。

カンニングを行った学生は、消しゴムに見せかけた受信機や、耳の中に収まるイヤホンなどを使って外部と連絡を取っていたと言われています。

また、この事件を主導した6人が懲役4年から1年8カ月の判決を受けています。

懲役刑を科される人々が出てもなお、不正問題は毎年のように起こっています。

就職難

現在の中国には、学歴の高い人が多く存在します。

そのため、就職の際に企業への最低応募条件として大卒や院卒が設けられている場合も多く、学歴が就職活動に対してプラスに働かないことも増えてきました。

こうした高学歴の飽和状態は、深刻な就職難を引き起こしています。

中国の統計によると、2022年の大学卒業生の就職率は文系学生が12.4%、理系でも理学系が29.5%、エンジニア系が17.3%と低水準を記録しており、2023年はさらに低くなることが予想されています。

国内での就職難によって、国外で働くことを選択する中国人の方も増えています。

日本にも、毎年数多くの中国の方が働きにきています。

まとめ

今回は、中国が学歴社会化した背景や中国における学歴社会の構造、日本との違いなどについて解説しました。

就職難を背景に、中国の企業ではなく日本の企業に就職を検討する中国人の方々も出てきています。

中国人の方々は、定年まで働くことができるという日本の雇用システムの安定性に魅力を感じていらっしゃるようです。

労働力人口の減少が社会問題になっている日本において、中国学歴社会を生き抜いた優秀な人材を雇うことができるというのは悪い話ではないと思います。

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