中国語と貿易のプロになる!物流業界で働く外国人のリアルと未来

你好!李陽佳(り・ようか)です。中国・遼寧省の出身で、10歳のときに日本へ移住。現在、外国人向け人材紹介会社に勤めながら、主に中国出身の求職者向けに就職支援を行う一方、そこで得た知識をお伝えしたいと思いこうしてライターもしています!

さて、今回は物流業界のお話です。私自身は現場のドライバーや通関士ではありませんが、これまでに数多くの物流現場のマネージャーや実際に働く中国籍スタッフの方々とお話をしてきました。そこから見えてきたのは、中国語スキルを持つ人材が、日本の物流業界で活躍するために押さえておきたい「現実的なルールと期待値」です。

個人的な話ですが、物流業界と聞くと思い出すことがあります。私が学生時代にしていた中国語翻訳のアルバイトで、中国からの貨物ラベルの誤訳に気づいて、「あなたの翻訳のおかげで現場が助かった」と感謝された経験がいまも忘れられません。そう、物流の仕事では中国語など言語スキルがトラブルを未然に防ぐことにも直結するのです。

貿易業界と物流業界の違いとは?業務内容を整理

「そもそも、貿易と物流ってどう違うの?」

多くの人がそう思うかもしれません。仕事で関わっていないとまず意識をしないものです。そこでまず、混同されがちな「貿易」と「物流」の違いから整理しましょう。

  • 貿易:輸出入の契約、価格交渉、インボイスやパッキングリストなどの書類作成、関税処理など、「モノのやりとり」に関する契約・事務手続きを行う。
  • 物流:実際にモノを「動かす」部分を担当。倉庫管理、通関、輸送手配などが中心。

このように「貿易」と「物流」は密接に関係しているものの、求められるスキルや業務内容には明確な違いがあります。しかし最近は、越境ECやデジタルマーケティングが急拡大し、「契約から輸送、そして販売後のアフターサポートまで」を一気通貫で担える「貿易」と「物流」の知識を併せ持つ中国語人材の価値が高まっているのです。

そのどちらも紹介するとたいへんなボリュームになってしまうので、今回は、現場感覚や対応力が問われる「物流」に絞り、「貿易」はまた次回にご紹介したいと思います。

なお、経済産業省によると、2023年の日本の越境EC(物販系分野のBtoC)の市場規模は14兆6,760億円で、前年比で4.83%増加。とくに中国は世界全体において過半数のEC市場規模を持っており、日本に限らず、世界規模で中国語対応できる人材の活躍の場が広がっていることが分かります(出典:令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書

物流の現場:倉庫管理・通関手続き・配送調整

物流業界における中国語人材の役割は幅広いです。主に以下の3つの現場で力を発揮できます。

倉庫管理(Inbound/Outbound)

中国から届いた商品の入庫作業や、輸出前の出荷準備などを担当。特に中国メーカーとの連携では、現地の担当者とのWeChatでの連絡や、検品項目の確認が求められます。包装方法や数量のミスなどを見抜く上で、中国語スキルが求められます。

通関手続き(Customs Clearance)

税関とのやりとりを担う通関士を補佐し、輸出入書類を翻訳・整備。HSコードやインボイスの内容を中国側と調整することもあります。日本語・中国語両方での専門用語理解が重宝されます。

配送調整(Forwarding)

納期が遅れた場合などに、航空会社や船会社、中国側顧客とスピーディーにやりとりして代替案を提示します。ここで活きるのが「気配り」と「即レス力(すぐに対応する力)」です。LINEやメールよりも、WeChatがメインのやりとりになるケースも多く、文化や習慣への理解も武器になります

実際に、ある大手物流企業の採用担当者が、「中国語ができるスタッフが一人いるだけで現場の安心感が違う」と語っていました。言語の壁を超えるだけでなく、現場を回す潤滑油のような存在になることができるのです。

実務経験×語学力が評価される!物流業界の即戦力とは?

物流業界では、語学力だけでなく「現場経験」も重視されます。アルバイトやインターンでの経験も大きなアピールポイントになるでしょう。

たとえば私の後輩である陳さんは、学生時代に貿易事務のアルバイトをしていました。その経験を履歴書に書いたところ、面接で高く評価され、卒業後はその企業に正社員として採用されました。もしあなたがまだ学生であれば、将来の物流業界への就職を見越した上でアルバイトを選択することもいいかもしれません。

そこで、企業が求める「即戦力」の条件は以下のような点です。

  • 中国語・日本語ともにビジネスレベル(JLPT N2以上が目安)
  • ExcelやGoogleスプレッドシートでの基本操作ができる
  • 輸出入に関する基礎用語がわかる
  • 報連相(報告・連絡・相談)がしっかりできる

特に物流の現場は、トラブル対応の多さが特徴です。ミスをゼロにするのは難しくても、早めに報告して解決に動ける人材は信頼されます。

もっとも、最近ではAIや自動化ツールの導入も進んでいます。インドの調査会社「Straits Research社」が2023年に世界各地域(北米や欧州、アジア太平洋地域)を対象に実施した調査によると、大手物流企業の27%がAIを導入していたそうです(出典:物流における AI 市場規模レポート、2032 年|Straits Research)。こうした変化を前向きに学べる姿勢も、評価されるポイントでしょう。

ビザ更新や転職で気をつけたいポイント

外国人として日本で働くには、ビザの管理も重要です。物流・貿易職で多くの方が取得するのは「技術・人文知識・国際業務(技人国)」ビザです。業種は違いますが、私もこのビザで就労しています。転職時に注意すべきポイントがいくつかあります。

  1. 職務内容が大きく変わらないか確認
    • 「国際取引業務」→「倉庫ピッキング」のように、専門性がない業務に変わると更新が難しくなる可能性があります。
  2. 転職前に入管に相談しておく
    • 転職予定の会社が「外国人の雇用実績があるか」「在留資格のサポート体制があるか」も重要です。
  3. 失業期間は最大3カ月が目安
    • 離職から3カ月以上空くと、ビザ更新が難しくなるケースもあるため、計画的な転職活動をおすすめします。

厚生労働省によると、2024年末時点で中長期在留外国人数は約349万人超と前年より10.5%増。その中で就労ビザ(技人国)を持つ外国人の数は、前年に比べて15.5%増えています(出典:令和6年末現在における在留外国人数について|出入国在留管理庁)。

物流業界で外国人が長く働ける企業の探し方とキャリア

日本で長く働くには、企業選びが何より大切です。給与や待遇だけでなく、「どれだけ外国人に理解のある職場か」がカギになります。たとえば、以下のような企業は外国籍社員からの評価も高いです。

  • 社内に中国人社員や通訳担当がいる
  • ビザ申請や更新を積極的にサポートしてくれる
  • キャリア面談が定期的にある
  • 残業時間が少なく、生活バランスが取りやすい

私の友人である李さんは、最初は通関業務のサポートとして入社しましたが、今では越境EC部門のリーダーとして活躍中。語学スキル+物流現場の経験が評価され、新規プロジェクトを任されるまでになったのです。

今後のキャリアを考える上でのヒントとしては、業界に飛び込む前に、以下のステップをイメージしておくとよいかもしれません。

  • 入社後1~2年で現場感覚を身につける
  • 通関士資格や貿易実務検定などを取得
  • デジタルマーケやEC分野に横展開していく

中国語×実務力という強みを物流業界で活かそう

物流業界は地味に思われがちですが、実は「国際感覚」と「現場力」が同時に鍛えられる、非常に実践的、かつ、長期間にわたり使えるスキルを培うことのできる分野です。

中国語が話せるだけでなく、現場で汗をかいた経験があれば、どんな企業でも頼られる存在になれるはず。特に越境EC・デジタル物流・AI活用といったテーマが伸びている今、キャリアの可能性はますます広がっています。

もし、日本で中国語を活かして働きたいと考えているならぜひ物流業界にも目を向けてみてください。あなたの語学力と行動力が企業と世界をつなぐ大きな力になります。