中国の労働法は日本とどう違う?雇用形態や残業代等について解説

近年、日本で働く中国人の方が増えてきました。

中国は日本と比較的近い距離に位置していますが、法律で定められている労働基準にはいくつか相違点があることはご存じでしょうか。

今回は、中国の労働法の主な内容や中国の労働法と日本の労働法の違いについて解説します。

中国人の方と一緒に働く際は、参考にしてみてください。

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中国の労働法の主な内容

はじめに、中国の労働法の主な内容について解説します。

労働時間

中国の労働時間の基準は、日本の労働基準法で規定されている内容とほぼ同じです。

労働時間は1日8時間以内、週の平均労働時間は44時間以内とされています。

しかし、実際には多くの地域で条例などにより、週の平均労働時間は40時間以内と定められています。

また、最低でも週1日は休日を設けるよう、労働法38条に規定が設けられています。

社会保険制度

中国の労働法で定められている社会保険制度は、養老保険、医療保険、公傷保険、失業保険、生育保険の5つです。

また、中国の保険料は他国と比べ、企業の負担額が大きいというのが特徴です。

その負担額は、給料の約50%にも及ぶと言われています。

養老保険とは、日本でいう年金のことを指します。

一定期間(15年以上)納付することで、退職後に年金が給付される仕組みです。

公傷保険とは、日本でいう労災保険のことを指します。

生育保険とは、日本の医療保険における出産に関する手当と、雇用保険における育児休業給付を複合した制度を指します。

この保険によって、出産にかかる医療費や、出産休暇中の手当を受給することができます。 また、生育保険には男女関係なく加入する必要があります。

有給休暇

中国で有給休暇を取得するには、連続勤続年数が大きく関係します。

連続勤続年数とは、今働いている企業と以前まで働いていた企業での勤務年数を合算した年数のことを指します。

取得できる有給休暇日数は以下の通りです。

連続勤続年数が

1年以上~10年未満→年5日

10年以上~20年未満→年10日

20年以上→年15日

また、与えられた有給休暇は全日数消化することが原則です。

特別休暇

中国には、地方から都市部に出稼ぎに来ている方々が多く存在します。

こういった方々への配慮のために、探亲假という特別休暇制度が設けられています。

探亲假とは、故郷にいるご家族を訪ねるために与えられる有給休暇のことです。

探亲假が与えられる期間は、以下の通りです。

既婚社員の配偶者に対する探亲假の場合

年に1度30日間の探亲假が与えらえれます。

なお、帰省先が遠く、社員自らが希望する場合は、2年に1度60日間の探亲假を与えてもよいとされています。

既婚社員の父母に対する探亲假の場合

4年に1度20日間の探亲假が与えられます。

未婚社員の父母に対する探亲假の場合

原則として、年に1度20日間の探亲假が与えられます。

ただし、仕事の関係で当年中に探亲假を与えることができない、または社員が自ら希望する場合は、2年に1度45日間の探亲假が与えられます。

そのほかには、本人が結婚する際に取得可能な結婚休暇(3日)、両親や配偶者、子どもなどが亡くなった場合に取得可能な葬式休暇(1〜3日)、病気休暇証明書を会社に提出することで取得可能な病気休暇などがあります。

経済補償金

経済補償金とは、やむを得ない事情で会社から解雇される場合の生活保障に相当する補償金を指します。

経済補償金は、法的に支給することが定められています。

支給額は、平均月給×勤続年数で計算します。

ここでいう月給は、労働契約の解除または停止の前12か月分の平均額を指し、賞与や手当なども含めて算出します。

この月給には限度が設けられており、当該地域の平均給与の3倍~当該地域の最低賃金と規定されています。

ここで言う勤続年数は、今働いている会社で勤務した年数のことです。

勤続1年を1か月として計算し、上記の方法で算出した平均月給と掛け合わせます。

例えば、5年勤続であれば平均月給×5で、5か月分の給料が補償金になるということです。

また、勤続年数には12年の限度が設けられています。

13年以上勤務していても×12で計算するので、注意しましょう。

リストラ

企業が20人以上のリストラをする、もしくは20人未満であるが全社員の10%以上に相当する人数のリストラを行う場合、労働法によって以下のような対応が求められます。

30日前までに工会または全社員に対して説明を行う

工会または全社員の意見を聴取する

リストラ案を労働行政管理部門に報告する

労働契約を解除する

リストラによって従業員の生活は大きく変わってしまいます。

そのため、リストラを行う際は労働法に定められている手順をしっかり踏む必要があります。

日本の労働法との違い

ここからは、中国の労働法と日本の労働法の違いについて解説します。

具体的な試用期間の規定

日本の労働法には、試用期間に関する直接的な規定が設けられていません。

一方、中国の労働法では第19条、21条で具体的な試用期間が規定されています。

労働契約の期間ごとの具体的な試用期間は以下の通りです。

労働契約の期間が

3か月以上~1年未満 → 試用期間1か月以内

1年以上~3年未満 → 試用期間2か月以内

3年以上の固定期間労働契約および無固定期間労働契約 → 試用期間6か月以内

また、3か月未満の労働契約、非全日制雇用の労働契約、業務上の一定の任務の完了をもって契約期間とする労働契約は試用期間を設けないよう規定されています。

非全日制労働者とは、同一の雇用主の元での1日当たりの平均労働時間が4時間を超えず、1週間の労働時間の合計が24時間を超えない時給制の労働契約のことを指します。

実際中国では、これらの労働法による規定に加えて、地区ごとに試用期間の条例が設けられていることがほとんどです。

労働契約期間の有無

中国では労働契約をする際に、労働期間の約定を行う必要があります。

日本でも労働者を採用する際に労働条件を明示する義務が存在しますが、中国では書面による労働契約の締結が必須とされているため、日本よりも明示事項が具体的に定められているのが特徴です。

中国の労働契約の期間は以下の3つに分類されます。

固定期間労働契約

固定期間労働契約とは、契約期間2年など、労働する期間に定めのある労働契約のことを指します。

無固定期間労働契約

無固定期間労働契約とは、期間に定めのない労働契約を指します。

労働法において、労働者が契約の締結時または更新時に固定期間労働契約を申し出ない限り、企業は労働者と無固定期間労働契約を結ばなければならないとされている条件があります。

その条件は以下のとおりです。

労働者の当該企業の勤続年数が10年になる場合

雇用企業が初めて労働契約制度を実行、または国有企業が制度改革によって新たに労働契約を結ぶ際、当該企業の勤続年数が10年以上で、定年年齢まで10歳未満である場合

固定期間労働契約を連続して2回締結し、雇用主が一方的に労働契約を解除できる理由がない状態で労働契約を更新する場合

業務上の一定の任務の完了をもって契約期間とする労働契約

業務上の一定の任務の完了をもって契約期間とする労働契約とは、企業と労働者が一定の任務の完了をもって契約期間を満了することを合意の上結ぶ労働契約のことを指します。

時間外労働の規定

日本の労働基準法では、時間外労働に関する明確な時間規定はありません。

一方中国の労働法には、具体的な時間規定が設けられています。

中国の労働法第41条によると、時間外労働時間が通常1日1時間を超えてはならないとされています。

また、例外も認められています。

やむを得ない理由がある場合、労働者の健康を保障する条件下で、1日3時間以内であれば労働時間を延長することが可能です。

ただし、1か月あたりの時間外労働時間が36時間を超えてはいけません。

時間外・休日労働の賃金

日本の労働法に比べ、中国の労働法では、時間外・休日労働の賃金がかなり高く設定されています。

中国の労働法で定められている割増賃金の規定は以下のとおりです。

平日の残業代→労働者の時給の150%

土日の残業代→労働者の時給の200%

休日の残業代→労働者の時給の300%

なお、土日については、労働者に代休を与えれば残業代を支給する必要はないとされています。

出産休暇の規定

日本の労働法では、出産休暇は産前42日、産後56日と規定されています。

一方、中国では最低でも90日の出産休暇を取得することが可能です。

加えて中国では、難産の場合は15日、高齢出産の場合は44日休暇を加算するなど、地区ごとに補充規定が設けられている場合がほとんどです。

秘密保持契約の規定

日本の労働法には機密保持契約に関する規定はありませんが、中国の労働法には規定があります。

中国の労働法に秘密保持契約の規定が設けられている背景として、中国人は日本人に比べて転職が多く、企業への忠誠心が低い傾向にあることが挙げられます。

そのため、中国では秘密保持契約の規定を明確に結んでおく必要があります。

退職金制度の有無

日本とは異なり、中国で円満退職した際は退職金が支払われることはありません。

しかし、解雇など何らかの事情がある際は、中国でも退職金が支給されます。

この退職金を経済補償金と言います。

まとめ

今回は中国の労働法の主な内容、中国の労働法と日本の労働法の違いについて解説しました。

中国人の方と一緒に働いていて違和感を感じた時は、もしかしたら中国と日本の労働法の違いが関係しているかもしれません。

お互いの価値観を尊重し、より効率的な労働環境の実現を目指しましょう。

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